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【復興応援隊インタビュー ~土と風~南三陸町入谷地区】 里山に花木植え 憩いと交流の場に

 里山に花木植え

憩いと交流の場に

南三陸町入谷地区復興応援隊・安藤仁美さん(27)

〔プロフィール〕1988年9月生まれ、愛媛県西条市出身。2015年4月から南三陸町入谷地区復興応援隊として、一般社団法人南三陸研修センターのスタッフを務める。

農業・阿部勝善さん(64)

〔プロフィール〕1951年4月生まれ、南三陸町入谷地区出身。無農薬栽培の米作りに取り組む農家であり、造園業も手掛ける。廃校を宿泊施設兼グリーンツーリズムの活動拠点に再生した「さんさん館」の理事。震災前から入谷地区のグリーンツーリズムの中核を担っている。

〔南三陸町入谷地区〕宮城県南三陸町は同県北東部に位置し、太平洋に面する。入谷地区は同町の西に位置する内陸寄りの集落。同町中心部の志津川地区から車で5分程度の場所にある。東日本大震災では、被災した沿岸地域の支援拠点の一つとなった。

◆ボランティアと住民が協力

─お二人の活動を教えてください。

安藤さん 「南三陸町入谷地区にある宿泊研修施設『南三陸まなびの里 いりやど』は宿泊機能や研修機能、交流スペースなどを備え、全国の学生や企業人が集う学びの拠点です。私はその運営主体である一般社団法人南三陸研修センターで研修プログラムの企画開発などに携わっています。南三陸研修センターは震災後に南三陸だから伝えられる『新しい価値』を発信していこうと立ち上げられました。今年は、入谷の里山に花木を植えて憩いと交流の場所をつくる『花見山プロジェクト』を本格的にスタートさせました。プロジェクトでお世話になっているのが、阿部勝善さんです」

阿部さん 「私はもともと兼業農家だったのですが、震災後に造園業を始めました。そこに花見山の話が持ち上がり、手伝うことになったんです」

安藤さん 「入谷には昔から『ばば山』と呼ばれて親しまれてきた山があります。20年ほど前、福島県にある花見山をお手本にして、入谷地区に花木を植えようという構想が生まれました。長い時間が経って断ち切れていたのですが、震災後、大勢の人が入谷を訪ねてくれるようになり、入谷で何かしたいということになって、構想が復活しました」

◆桃やツツジを植え、来春に「感謝祭」

─花見山プロジェクトではどのような活動をしているのでしょうか。

安藤さん 「今年は山の整地を進め、約1㌶に桃の木200本、ツツジ200本を植えました。伐採などの専門的な作業は阿部さんをはじめとする地元の方にお願いし、ボランティアには伐採した木の枝の片付けや植樹を手伝ってもらっています。今年度は11月初旬までに8団体、163人が参加してくれました。さらに同月中に6団体、111人の参加が予定されています。」

阿部さん 「今年は少し成長した桃の木を植えたので、来春には花が咲きます。それに合わせて、ボランティアのみなさんを招待し、感謝祭を開きたいと考えています。花見をしながら、ばば山で採れる山菜やタケノコを天ぷらにして食べてもらって、ね」

安藤さん 「町外から入谷を訪れる人にとって、これまでは何か活動しても形に残るようなものがありませんでした。花見山プロジェクトでは、自分が活動した場所が花の咲く山となって形づくられていく。花見山は交流の場となり、住民の憩いの場となり、地域の観光スポットにもなるでしょう。感謝祭を開けば、ボランティアのみなさんにも地域の方々にも喜んでもらえると思います」

◆花見山を地域づくりのきっかけに

─活動を通じて、どんな成果が生まれてきていますか。

阿部さん 「花が咲いたら、地域が変わると思います。住民にも活動の意味が伝わり、協力者も増えるでしょう。一生懸命準備していたことが、桃の花と一緒に開花します」

安藤さん 「ばば山は頂上付近から入谷を一望でき、春になるとウグイスが鳴く素敵な山です。今年の夏、地域の住民や関係者に集まってもらい、『ばば山の思い出と未来を語る会』を開きました。すると、昔ばば山を背景にして卒業写真を撮ったとか、きのこ採りをしたといった思い出話がたくさん出てきたんです」

阿部さん 「ボランティアたちの力を借りて再び人の集う場所にできれば、住民も喜びます」

安藤さん 「語る会では、思い出話のほかに、参加者から『こんな花を植えたい』、『記念日に植樹できる企画を実施してはどうか』といった夢がたくさん出てきました。活動を通じて地域の理想を話し合うきっかけにすることが重要だと発言してくださった方もいます。プロジェクトが単なる名所づくりでなく、地域づくりの材料になればいいなと感じています」

─入谷地区の現状を教えてください。

阿部さん 「震災後の生活も、苦しいながら何とかやってこられた。だからといって、悲しみを抱えていない訳ではありません。震災当日、仕事や病院などで町内の志津川地区に出かけていた住民も多く、津波に遭って亡くなった方が大勢います。同級生や近所の人、若い人もね。今でもふと思い出します。心の底から大きな声で笑えるようになるまではまだまだ時間がかかると思う」

安藤さん 「だからこそ、できるだけ大勢に入谷に来てもらい、入谷の魅力や情報を感じて、発信してほしいですね」

阿部さん 「入谷の人たちは人が訪ねてくれることに喜びを感じるんです。花見山を通じて訪れてくれる人が増えれば、入谷はきっと元気になります」

◆被災地に「恩返ししたい」

─安藤さんはなぜ応援隊に就いたのでしょうか。

安藤さん 「大学卒業後の2011年春、ボランティアで南三陸町に来ました。その後、いりやどをつくる構想が出てきて。構想の核である大正大学の職員として、南三陸へ学生を連れて行くツアーの企画を担当しました。そのまま職員として働く道もありましたが、それよりも南三陸に根ざして地域に恩返ししたいという気持ちが強く、応援隊として働くことにしました」

阿部さん 「ボランティアに来てたのに、恩返しって言うんだよ(笑)」

安藤さん 「最初は大学を卒業したばかりで、何も分からず、何もできなかったんです。避難所のみなさんに食事をごちそうになったり、車がないから地元の方の車に乗せてもらったり。どっちがボランティアなんだと(笑)。与えてもらったものの方が大きい。このままでは終わりたくないなという思いはありました。」

─応援隊の活動をどのように評価されていますか。

阿部さん 「安藤さんは、知恵と勇気と行動力の人(笑)。安藤さんだけでなく応援隊のみなさんは自分たちでは考えつかないようなことを考えて、すぐに行動に移してくれる。とても頼もしいです。それに、応援隊のように若い人たちと触れ合えることが嬉しい。気持ちが若くなるし、一生懸命に働く様子を見ていると、自分たちも頑張らなければと思えるね」

─活動の課題は何でしょうか。

安藤さん 「花見山プロジェクトは、植樹して終わりではありません。景観を維持し、まちづくりの核としていくために継続させる必要があります。活動資金も必要です。研修プログラムを実施しながら収益を出せる仕組み、ボランティアに継続して来てもらうためのしくみづくりなどを考えています」

─応援隊へのご意見、要望はありますか。

阿部さん 「事業を継続してほしいです。応援隊の活動が続けば、多くのことが変わっていくと思います」

─今後の目標は。

安藤さん 「応援隊は、少子高齢化や農業の担い手不足など震災で加速化した地域課題の進行を緩和させるために派遣されているのだと認識しています。私は入谷で、さまざまな世代をつないでいきたいと思っています。都会の豊かさとは違うかもしれませんが、入谷の人々は楽しく明るく暮らしている。この地域を次の世代につないでいく役割を担っていきたいです」

 

 
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